ウェブサイトを閲覧する際、ブラウザでページが表示されるまでの裏側では、実に多くの処理が行われています。その一連の処理をまとめて「レンダリング」と呼びます。レンダリングは、表示速度やユーザーエクスペリエンス(UX)、そしてSEOに大きな影響を与える重要な工程です。
本記事では、YouTubeのGoogle Search Central チャンネルで取り上げられた情報も含め、以下の内容を詳しく解説します。
目次
レンダリングの重要性
ウェブサイトのレンダリングは、単なる「画面への表示」以上に、以下の観点で非常に重要です。
表示速度
レンダリングが遅いと、ユーザーはサイトを開くまでに待ち時間が発生し、離脱率が上がってしまいます。
ユーザーエクスペリエンス
レンダリング方式によって、ページの操作性やインタラクションのスムーズさが変化します。ユーザーが快適に使えるサイトかどうかを左右する大きな要素です。
SEO
検索エンジンは最終的にレンダリングされたHTML(コンテンツ)を評価します。JavaScriptに対応する検索エンジンは増えていますが、対応度合いには限界があるため、サイトのレンダリング方式がSEOに直接影響します。
Google Search Central チャンネルでの動画の概要
YouTubeのGoogle Search Central チャンネルでは、JavaScriptを使ったウェブサイトのレンダリングや、検索エンジンがJavaScript生成コンテンツをどう処理するかといったトピックを公式見解として解説しています。主なポイントは以下のとおりです。
- Google検索は、JavaScriptで生成されたコンテンツをある程度認識できますが、一部の機能に対応できないケースもある。
- もし検索エンジンがJavaScriptを正しく実行できず、コンテンツがレンダリングされていなければ、インデックス登録や評価に影響が出る。
- かつては、ダイナミックレンダリングと呼ばれる方法(クローラーにはサーバーでレンダリングしたHTMLを返し、ユーザーにはクライアントサイドでレンダリングされたページを返す)が回避策として紹介されていた。
- しかし、ダイナミックレンダリングは仕組みが複雑かつリソースを多く要するため、Googleとしては推奨度が低い。
- 代わりに、サーバーサイドレンダリング(SSR)、静的レンダリング(プリレンダリング)、ハイドレーションなど、より根本的な解決策が推奨される。
Google Search Central チャンネル動画のポイント
- JavaScriptで生成されたコンテンツを検索エンジンがどう認識しているかを、他サイトよりも詳しく説明している。
- ダイナミックレンダリングの具体的なメリット・デメリットに加え、「Googleとしては非推奨である」旨をはっきり伝えている。
- SSRやプリレンダリング、ハイドレーションなどの代替手段について、公式ならではの詳細な解説を行い、SEO視点も含めてトータルに比較している。
こうした情報は、他のサイトでもカバーされていますが、Google公式の視点であるため、信頼性が高く、最新かつ正確な情報を得られるのが利点と言えます。
主要なレンダリング方式
ここからは、ウェブサイトのレンダリング方式を大きく分けてプリレンダリングと動的レンダリングに分類し、それぞれの手法を詳しく見ていきます。さらに、ハイブリッド方式であるハイドレーションや、近年注目される分散パーシステントレンダリング(DPR)についても触れます。
プリレンダリング:事前にコンテンツを生成する方法
プリレンダリングとは、ユーザーがアクセスする前にあらかじめHTMLファイルを生成しておく手法です。アクセス時点ではすでに完成したHTMLが存在するため、表示速度が非常に速く、サーバー負荷も軽減できます。
静的サイトジェネレータ(SSG)の仕組み
プリレンダリングの代表例に、静的サイトジェネレータ(SSG)があります。
- Jekyll, Hugo, Eleventy, Gatsby, Next.jsなど多数のツールが存在。
- Markdownなどのテキストファイルとテンプレートを組み合わせ、静的HTMLを生成する。
- 生成したHTMLは、CDNに配置して効率的に配信可能。
メリット
- 高速な表示
あらかじめ生成されたHTMLを返すだけなので、初期表示が非常に速い。 - 高いセキュリティ
データベースやサーバーサイドスクリプトを介さないため、攻撃対象が少なく安全性が高い。 - 優れたSEO
クローラーがHTMLをそのまま取得できるため、クロールの確実性が高い。 - 容易なメンテナンス
ファイルベースでコンテンツを管理でき、シンプルな構成。 - 高いスケーラビリティ
CDN配信により、大量アクセスにも対応しやすい。
デメリット
- 動的機能の実装が難しい
ログインやコメント投稿など、サーバーサイドが必要な機能は工夫が必要。 - 更新時のビルド手間
コンテンツを更新するたびにサイト全体—or 該当部分—を再ビルドする必要がある。 - 大規模サイトでの管理
ページ数が膨大になると、ビルド時間や更新フローが煩雑になりやすい。
プリレンダリングは、静的なコンテンツがメインのサイトや、更新頻度の低いブログなどでは特に効果的な手法です。また、JavaScriptに依存せずにHTMLを出力できるため、JavaScriptレンダリングの問題を根本的に回避できる点でも有利です。
動的レンダリング:都度コンテンツを生成する方法
動的レンダリングとは、ユーザーからリクエストがあるたびに、サーバーまたはクライアント側でコンテンツを生成するアプローチです。主に以下の2種類に大別されます。
- サーバーサイドレンダリング (SSR)
- クライアントサイドレンダリング (CSR)
サーバーサイドレンダリング(SSR)
サーバーサイドレンダリング (SSR) では、ユーザーのリクエストを受けてサーバーがHTMLを生成し、それをブラウザに送信します。アクセスのたびにテンプレートエンジンが動作してHTMLを組み立てるイメージです。
- 代表的なフレームワーク例として、Next.js (Reactベース), Nuxt.js (Vueベース), Rails (Ruby), Laravel (PHP) など。
- サーバーはデータベースやAPIから必要な情報を取得し、テンプレートに埋め込んでブラウザへ返す。
SSRのメリット
- SEOに有利
初期から完全なHTMLが生成されるため、クローラーがコンテンツを確実に認識。 - 初期表示速度の向上
ブラウザは受け取ったHTMLをすぐに表示できる。 - ユーザーごとのパーソナライズ
Cookieやセッションを使ったログイン状態の管理、個別の表示切り替えが容易。 - 低スペック端末への配慮
重いJavaScriptを実行する前に、必要最低限の表示を行える。
SSRのデメリット
- サーバー負荷
リクエストごとにHTML生成処理を行うため、サーバーに負荷がかかりやすい。 - 開発コストの増大
SSRに対応したフレームワークやライブラリの学習が必要。 - インタラクションの遅延
クライアントサイドのJavaScriptが動作するまで、一部の動的機能は使えない。
さらに近年では、Vercel KV などのキャッシュ機構を活用し、頻繁に参照されるデータを高速に提供したり、React Suspense を利用してデータ取得中も部分的にUIを先に表示する仕組みが整えられています。これにより、SSRの課題である“サーバー負荷”や“レンダリング待ち時間”をある程度緩和できる場合があります。
クライアントサイドレンダリング(CSR)
クライアントサイドレンダリング (CSR) は、ブラウザ(クライアント)側でJavaScriptを実行し、APIなどから取得したデータを動的にHTMLへ反映する方式です。シングルページアプリケーション (SPA) の多くがCSRを採用しています。
- サーバーから最小限のHTMLとJavaScriptファイルをダウンロードする。
- ブラウザがJavaScriptを実行してAPIからデータを取得する。
- 取得したデータをDOM操作によってページに反映する。
CSRのメリット
- 高いインタラクション性
JavaScriptでページの一部だけを更新できるため、ユーザーが操作しても再読み込みを挟まず、アプリのような操作感を実現。 - サーバー負荷の軽減
HTML生成の大部分がクライアント側で行われるため、サーバーリソースを節約できる。 - オフライン対応
PWA(Progressive Web Apps)の仕組み(Service Workerなど)と組み合わせることで、オフライン環境でも一部機能を利用可能。
CSRのデメリット
- 初期表示速度の低下
JavaScriptのダウンロードと実行、データ取得が終わるまで画面が完成しないため、ユーザーがコンテンツを目にするまでタイムラグが発生しやすい。 - SEOの難しさ
JavaScript実行後のHTMLをクローラーが正しく取得できない場合、インデックス登録に問題が生じる。 - ユーザー環境依存
古いブラウザや低スペック端末ではJavaScriptが正しく動作しない可能性がある。
CSRは、GmailやGoogleマップのように、高度なインタラクションを伴うWebアプリケーションに向いています。一方で、検索エンジン向けには追加の対策(プリレンダリングやSSR、ハイドレーションなど)を用いる必要がある点に注意しましょう。
ハイドレーションで両取り? ハイブリッドなアプローチ
近年は、SSRとCSRの長所を組み合わせたハイブリッドなアプローチとして、ハイドレーション(Hydration)という手法が広く使われています。
- SSRで最初のHTMLを生成し、ブラウザに送信する。
- ブラウザ受信後、CSRによるJavaScriptが“ハイドレーション”を行い、静的なHTMLにインタラクティブな機能を付加する。
ハイドレーションのメリット
- 初期表示の高速化&SEOの確保
SSRを行うため、クローラーやユーザーはすぐにHTMLを取得できる。 - 豊かなインタラクション
受信後、CSRの仕組みが走ることで、SPAに匹敵する操作性を実現。
ハイドレーションのデメリット
- 実装の複雑化
SSR + CSR の両方を設計・開発しなければならず、コードが複雑になる。 - パフォーマンスの注意
ハイドレーション処理そのものにリソースを消費するため、ページ全体の最適化が必要。
ハイブリッド戦略は、Next.jsなどのフレームワークが進化したことで、比較的導入しやすくなっています。一方で、最初のSSRは速いものの、ハイドレーションが走る間にユーザーが操作すると、若干のラグを感じることがあります。最適化にはチューニングが不可欠です。
分散パーシステントレンダリング(DPR)
分散パーシステントレンダリング(Distributed Persistent Rendering, DPR) は、比較的新しいレンダリング戦略として注目されています。SSRとSSG(静的生成)の利点を組み合わせたようなアプローチです。
- 最初のリクエスト
ページがまだ存在しない場合は、オンデマンドでサーバーがSSR的にページを生成する。 - 2回目以降のリクエスト
いったん生成されたページは静的なHTMLとしてキャッシュされるため、SSGのように高速に配信される。
DPRのメリット
- 初回の柔軟性+その後の高速表示
初回はSSRで動的生成、以降は静的ファイルとして配布するため、負荷を最適化。 - スケーラビリティ
キャッシュをうまく活用し、アクセスの多いページを効率的に配信可能。
DPRのデメリット
- 実装の複雑さ
フレームワークやインフラの設定が必要になる場合が多い。 - キャッシュの更新
ページ内容が変わったとき、キャッシュをどのタイミングで更新するかなどの管理が難しい。
DPRをサポートする仕組みはまだ発展途上で、フレームワークやホスティングサービスによって導入難易度が異なります。しかし今後、大規模サイトを中心に採用例が増えていくと考えられています。
レンダリングとSEO
レンダリング方式は、検索エンジンのクローラーがどうコンテンツを取得するかにダイレクトに影響します。特に、JavaScriptが関わるCSRにおいては注意が必要です。
SSR
サーバーが生成した完全なHTMLをクローラーが容易に取得できるため、SEOに有利です。
CSR
JavaScriptの実行が必要なため、クローラーがJSを実行しない(もしくは制限がある)場合、コンテンツを一部しか取得できない可能性があります。
プリレンダリング (SSG)
完全な静的HTMLを返すため、クローラーとの相性が非常に良く、SEOにおいても優位です。
GoogleはJavaScriptもある程度レンダリングできますが、インデックスまでにタイムラグがあったり、複雑なスクリプトを正しく処理できないケースも否定できません。そのため、Google公式(Google Search Central)としても、SSRや静的生成などできるだけクローラーがHTMLを直接取得できる形を推奨しています。
最適なレンダリング戦略を選択するためのポイント
ウェブサイトに最適なレンダリング方式は、サイトの目的や特徴、運用リソースなどを総合的に考慮して選ぶ必要があります。以下に主な検討項目を挙げます。
ウェブサイトの目的
- コンテンツ中心のサイトか、アプリケーションのような高度なインタラクションが必要か。
- 例: ブログメディアならプリレンダリング(SSG)やSSRが有利、地図やメールのようなインタラクティブアプリならCSRが有利。
コンテンツの更新頻度
- 頻繁に更新されるなら、動的レンダリング(SSR, CSR, DPR)が便利。
- 更新頻度が低い場合は、静的サイトジェネレータで十分。
インタラクションの種類
- ユーザーのログイン機能やコメント投稿、リアルタイム更新などが必要か。
- SSR + CSR(ハイドレーション)を組み合わせたアプローチが有効な場合も多い。
開発・運用リソース
- フレームワークの学習コストやサーバー構成の管理が可能か。
- 開発者が少ないなら、静的サイトジェネレータで簡潔に済ませるのも一つの手。
SEOへの重要度
- 企業サイトやECサイトなど、検索エンジンからの流入が死活問題となる場合はSSRやプリレンダリングを検討。
- CSRを利用する場合でも、ハイドレーションやプリレンダリングで対策を取れるかどうか。
データベースアクセスの頻度
- 頻繁にDBへアクセスする必要があるなら、サーバーサイドでのキャッシュ戦略(Vercel KV など)やCSRによる最適化も考慮。
- DPRのように“初回動的生成、2回目以降は静的配信”という手法を取り入れることで、データベース負荷を低減することも可能。
最近のフレームワーク(例:Next.js)は、SSRとSSG、CSR、ハイドレーション、さらにはDPR的なアプローチまでを単一のプロジェクトで柔軟に選択できるようになっています。自分のサイト要件に合わせて、必要なページだけSSRにしたり、一部はSSGにしたりと、ハイブリッドな形で運用することが容易になってきました。
まとめ
ウェブサイトのレンダリングは、表示速度・ユーザーエクスペリエンス・SEOという重要な要素を左右する大きなテーマです。以下のように、さまざまな手法が存在します。
プリレンダリング(SSG)
静的ファイルを事前生成し、高速表示と安全性を実現。
サーバーサイドレンダリング(SSR)
初期表示を高速化し、SEOにも有利。ユーザーごとのカスタマイズが容易。
クライアントサイドレンダリング(CSR)
アプリライクな操作感と高度なインタラクションを提供しやすいが、SEO対策が必要。
ハイドレーション(SSR+CSR)
両方の良さを組み合わせ、初期表示速度とリッチな体験を両立。
分散パーシステントレンダリング(DPR)
初回アクセス時は動的生成、以降は静的配布することで負荷と速度を両立。
特に近年では、ハイブリッド戦略が主流になりつつあり、Next.jsなどのフレームワークを活用することで、多様なレンダリング方式を柔軟に組み合わせることが可能です。
- CSRだけではSEOや初期表示速度に不安が残るケースが多いため、SSRやSSG、あるいはハイドレーションといった方式を併用するのが一般的になっています。
- また、Google Search Centralの動画でも触れられているように、ダイナミックレンダリングは手軽な回避策に見えますが、長期的な負荷や保守コストを考えると非推奨とされることが多いです。
最終的には、サイトの目的・規模・更新頻度・開発チームのスキルやリソースを総合的に判断し、最適なレンダリング戦略を選択するのがポイントです。
今後もウェブ技術や検索エンジンのアルゴリズムは進化を続けるため、公式情報(Google Search Central など)を定期的にチェックし、最新のベストプラクティスを学び続けることが大切でしょう。
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板浪雅樹

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